目の下のクマが目立つと、表情が暗く不健康そうに見えてしまい、実年齢よりも老けて映ってしまうため、お悩みの方も少なくないでしょう。
とはいえ、生活習慣の改善だけでクマを綺麗に除去することは難しく、市販の化粧品で隠すのにも手間や時間がかかり、お肌にもダメージを与えてしまいます。
そのため、最近では美容クリニックでクマを治療する方も増えてきています。
しかし、中には出来栄えに満足できない方や施術による後遺症が残ってしまう事もあるため、これから施術を受ける方の中には不安を感じている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、クマ取り整形によくある失敗例をご紹介します。
また、失敗するリスクを下げる方法なども具体的にご紹介しますので、ぜひご一読ください。
桐生有紀先生
日本形成外科学会専門医/日本美容医療協会/美容レーザー適正認定医/日本美容皮膚科学会正会員/日本美容外科学会正会員/日本抗加齢医学会正会員/
福島県立医科大学医学部医学科卒業、東京都済生会中央病院にて勤務ののち、日本医科大学付属病院形成外科・美容外科助教、天現寺クリニック院長を経て、2018年より勝どき駅前皮ふ科クリニック院長を務める。クリニックではアトピー性皮ふ炎など保険診療のほか、プラセンタ注射やリフトアップといった保険外の美容診療まで幅広く診療している。
クリニックHP:https://www.kachidoki-ekimae-hihuka.com/
※クリニックの選定には医師は関与しておりません。
クマ取りの代表的な施術法
目の下のクマは原因によって青クマ、茶クマ、黒クマの3つに分類され、それぞれ適切な治療法も異なります。
例えば、眼精疲労や寝不足による血行不良が原因となる青クマは、血行促進作用を持つ再生注射やお肌の表面にハリが出るヒアルロン酸注入、脂肪注入などが良い治療法となります。
それに対し、目の下の色素沈着が原因となる茶クマは、再生注射や色素を消すことのできるレーザー治療が効果的です。
加齢による目周囲のたるみやくぼみが原因の黒クマであれば、たるんでいる部位を切除する下眼瞼部脱脂や下眼瞼部切開法、くぼんでいる部位への脂肪注入などが効果的。
このように、クマの種類や性状に応じて適切な治療法は異なるのです。
そこで、まずはそれぞれの治療法について詳しくご紹介します。
ヒアルロン酸注入
ヒアルロン酸注入は、「切らないクマ治療」として人気があり、特に青クマや黒クマでお悩みの方におすすめの治療法です。
青クマや黒クマによる目の下のたるみやくぼみに対して、ヒアルロン酸を注入することで膨らみを持たせることができます。
具体的な施術方法は、目の下に局所麻酔を行い、極細な針でヒアルロン酸を注入します。
メスを使わないため、皮膚の切開や縫合の必要もなく、強い痛みを感じることもほとんどありません。
また、注入されるヒアルロン酸は元々人体に存在している成分のため、アレルギー反応の心配も少なく安全性が高い治療法です。
脂肪注入
脂肪注入はヒアルロン酸注入と同様、「切らないクマ治療」として人気があり、特に青クマや黒クマでお悩みの方におすすめの治療法です。
ヒアルロン酸注入との違いは、注入する物質と侵襲度です。
脂肪注入では、ご自身の太ももから採取した脂肪組織を目の下に注入します。
自分自身から採取した組織のため、アレルギーなどの拒否反応が起こりにくく、またヒアルロン酸のように体内で吸収されにくいため、定着すれば持続的な効果が期待できます。
しかし、ヒアルロン酸注入と違い太ももからの脂肪採取があるため、体への負担は少し大きくなります。
眼窩脂肪の脱脂
黒クマは、クマでお悩みの方のうちの約95%を占めると言われ、多くの方を悩ませる原因となります。
黒クマの主な原因は、加齢による眼窩周囲の皮膚や筋肉の衰えによって眼球を保護する役割を持つ眼窩脂肪を支えきれなくなり、皮膚がたるんでしまうことです。
また、生まれつき眼窩脂肪による膨らみがある場合もあります。
そこで、眼窩脂肪を除去することでたるみ、膨らみを改善させる治療法として、「下眼瞼部脱脂」や「下眼瞼部切開法」という2つの施術方法があります。
下眼瞼部脱脂は下まぶたの内側の結膜と呼ばれる粘膜部分を小さく切開し、そこから余分な脂肪を取り除く方法です。
あくまで下まぶたの内側からアプローチするため、皮膚を切ることなく表面的な傷が残りません。
また、電気メスを使用するため縫合も不要です。
ただし皮膚・眼輪筋には施術が及ばないため、皮膚のシワやたるみが残るケースもあります。
脱脂切開法
下眼瞼部脱脂に対し、下眼瞼部切開法では下まつげのすぐ下の皮膚を切開して、眼窩脂肪の除去だけでなく、余分な皮膚などの切除も行います。
そのため、下眼瞼部脱脂では難しかった皮膚のシワやたるみに対しても確実に効果が期待できます。
ただし、皮膚を切開するため内出血や腫れのリスクは高く、ダウンタイムも他の治療法より長期間必要になります。
クマ取り治療の失敗例
クマ取り治療は治療法の選択肢が豊富で、患者さんの希望に沿った治療が可能です。
しかし、中には出来栄えに満足できない方や施術による後遺症が残ってしまう方もいます。
これから施術を受ける方の中には、こういった失敗の可能性に不安を感じている方も多くいらっしゃるでしょう。
ここからは、実際によくあるクマ取り治療の失敗例を、治療法ごとにご紹介します。
ヒアルロン酸注入の失敗例
ヒアルロン酸注入で多い失敗例は、効果が持続しないことと、仕上がりに満足できないことです。
ヒアルロン酸注入は皮膚を切らない治療であり、メイクや洗顔も当日から可能で比較的リスクの低い治療法ですが、注入したヒアルロン酸が自然と体内で吸収されてしまうため、永続的な効果は期待できません。
ヒアルロン酸の種類や個人差によって違いはありますが、具体的な効果の持続期間は概ね数か月〜2年程度です。
そのため、多くの方が定期的に受診してヒアルロン酸を打つことになります。
また、1回の注射で数万円〜10万円ほどかかるため、費用対効果を考慮して施術を受ける必要があります。
加えて、注入量や注入部位を誤ると目の下に凹凸ができてしまい、仕上がりに満足できないこともあるため、医師の技術力が重要となります。
脂肪注入の失敗例
脂肪注入で多い失敗例は、効果が持続しないことと、仕上がりに満足できないことです。
ヒアルロン酸注入よりも効果の持続性が高いですが、注入した脂肪組織全てが定着するわけではなく、下眼瞼部脱脂や下眼瞼部切開法と比較すると永続的な効果は期待できません。
そのため、効果を持続させるには1回の注入である程度多めに脂肪を注入しなくてはなりませんが、量が多すぎると仕上りが不自然になってしまうため、やはり医師の技術力が重要となります。
また、注入する脂肪の量が適切であったとしても、患者さんの表情の変化によって違和感のある仕上がりになってしまうこともあるため、施術中に様々な表情を確認しながら注入していく必要があります。
眼窩脂肪の脱脂の失敗例
下眼瞼部脱脂で多い失敗例は、皮膚のしわやたるみが改善しないケースです。
下眼瞼部脱脂では表面の皮膚や眼輪筋にはアプローチしないため、内部の脂肪を除去した結果、表面の皮膚のシワやたるみが残るケースは少なくありません。
このようなケースで効果を得るには、下眼瞼部切開法で皮膚のたるみを引き上げることがおすすめ。
また、くぼみが目立つクマの場合は、脂肪の除去のみでは効果を実感できないため、脂肪注入などによって表面に適切なハリを持たせることが効果的です。
このように、満足のいく仕上がりを得るためには、クマの性状に応じて適切な治療法を選択する必要があります。
脱脂切開法の失敗例
下眼瞼部切開法の主な失敗例は、長いダウンタイムと目の下の凹凸、仕上がりの左右差などが挙げられます。
下眼瞼部切開法では、脂肪除去以外に余分な皮膚などの切除も行うため、下眼瞼部脱脂では難しかった皮膚のシワやたるみに対しても確実に効果が期待できます。
その一方で、皮膚の切開や縫合を伴うため腫れや内出血が生じやすく、1週間から1ヶ月間ほどの長いダウンタイムが必要となるため、仕事やプライベートの予定を十分調整した上で施術を受ける必要があります。
また、医師の経験・技術力次第では脂肪の除去の程度を誤ってしまい、目の下に凹凸を作ってしまう、もしくは仕上がりに左右差が出てしまうケースも。
さらに、切開後の皮膚縫合の技術力次第では、術後に傷跡が目立ってしまうケースもあるため、出来栄えや仕上がりに医師の技術力がとても重要となる治療法です。
クマ治療に失敗しても修正可能?
クマ治療に失敗したと感じている方の中には、再手術で修正したいと考える人も少なくありません。
結論から言えば、クマ治療後でも修正することは可能です。
しかし、初回の手術による腫れや浮腫みが取れなくては状態を正確に評価できないため、再手術のためにはある程度の日数が経過している必要があります。
早くても初回の手術から1ヶ月後、理想的には3ヶ月後の再手術が好ましいです。
逆に、創部の出血や感染など明らかに再手術を急いだ方がよいケースもあるため、迷ったらまずは美容クリニックの専門医に相談してください。
修正のための再手術は医師の技術に左右される手術であり、仕上がりなどについて事前に共有すべき情報も多いため、十分なカウンセリングを受けて慎重にクリニックを選ぶべきです。
クマ治療に失敗するリスクを下げる方法
クマ治療に失敗する多くの場合、治療法の選択と医師の技術力不足が原因となります。
クマの性状や種類に応じて選択すべき治療法も異なり、1つの施術が大きな効果を発揮するケースもあれば、複数の施術を組み合わせることが最適なケースもあるため、個々人に合った最適な治療法を選択することが重要です。
しかし、ご自身だけで最適な治療法を判断することは困難であり、経験と知識が豊富で、技術を伴った医師を選ぶことが治療の成功を左右します。
そのため、クリニックの提供している治療法、過去の症例数、費用、医師に対する口コミなど十分チェックしてからカウンセリングを受けるようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、クマ取り治療によくある失敗例を治療法ごとにご紹介しました。
クマ取り治療の難しい点は、患者さんによって仕上がりに求めるポイントや適切な治療法が異なる点です。
また、担当する医師の技術力に結果が大きく左右されてしまう治療でもあります。
だからこそ、経験豊かで信頼のおける医師やクリニックを選ぶことが何よりも大切です。