あなたは「家族」について、考えたことがありますか?
日曜の夕方、スーパーで買い物をしていたら、前を歩く家族連れが目に入った。お父さんがカートを押して、小さな女の子がお母さんの手を引っ張りながら「あれ買って〜」とねだっている。
古川えりか|ライター
元ラブマ編集部のインターン。Tinder・タップル・Pairs・with・Omiaiを全部ガチで使い込んで、合計300人以上とマッチング。恋活・マッチングアプリの記事を担当。X(@lovema_jp)の中の人。
何気ない光景なのに、なぜか胸がギュッとなった。
「家族が欲しい」——この気持ちって、ふとした瞬間に静かに、でも確実にやってくるんですよね。自分でも驚くくらい突然に。
でも、少しだけ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。
あなたは「家族」について、本当に考えたことがありますか?
「欲しい」と思う前に、そもそも家族とは何なのか。自分にとって家族はどんな存在だったのか。そこを一度見つめ直すことが、実は「家族が欲しい」を「家族ができた」に変える一番の近道だったりします。
読み終えた後に、あなたの中で「家族が欲しい」の意味が少しだけ変わっていたら嬉しいです。
家族は「風船の内側」に似ている
一つ、たとえ話をさせてください。
風船の中に小さな人がいるとします。その人は生まれた時からずっとその風船の中にいるので、風船がどんな形をしているのか、どんな色をしているのか、まったくわかりません。
風船の中は暖かくて、守られていて、空気がある。でもそれが「当たり前」すぎて、自分が何かに守られているという実感がない。外から風が吹いても、雨が降っても、風船が全部受け止めてくれている。でも中にいる人はそのことに気づかない。
家族って、そういうものだと思うんです。
生まれた時から両親がいて、おばあちゃんやおじいちゃん、親戚のおじさんおばさんに囲まれて育つ。ご飯が出てくる。布団がある。「おかえり」と言ってくれる人がいる。学校でいやなことがあっても帰る場所がある。
あまりにも当たり前すぎて、それが「家族に守られている」ということだと気づかないんです。風船の中にいる人が、風船の存在に気づかないように。
後になってわかるんですよね。あの人たちみんなが、自分のことを育ててくれていたんだって。
家族は、中にいる時にはその存在に気づけない。外に出て初めて、あの暖かさの正体を知る。
「守られる側」から「守る側」へ
人は成長して、やがて家を出ます。社会に出て、自分の力で生きていくようになる。一人暮らしを始め、仕事をして、自分の生活を自分で回せるようになる。
そこで初めて、あの風船の外側を見ることになります。
風が冷たいこと。雨が直接降りかかること。疲れて帰っても「おかえり」がないこと。一人で体調を崩した時の心細さ。金曜の夜の高揚感と、日曜の夜の静けさのギャップ。
風船の外に出て初めて、中がどれだけ暖かかったかを知る。
そして「家族が欲しい」と思い始める。
でもここで大事なのは、「あの暖かさに戻りたい」ではないということです。
あなたはもう大人です。守られる側に戻ることはできません。今度は、自分が風船を作る側になる番なんです。
守られていた人が、守る側に変わる。ギブされてきたものを、今度は次の誰かにギブする。それが「家族を持つ」ということの本質であり、人間にとってとても大きな成長のチャンスでもあります。
今までの人生を、まったく逆の方向から見つめ直す経験。自分がどれだけ多くのものを受け取ってきたかに気づき、今度はそれを誰かに渡していく。
「寂しいから家族が欲しい」と「家族を築きたい」は似ているようで違う
ここで少しだけ、自分の気持ちに正直になってみてください。
今「家族が欲しい」と感じているのは、次のどちらに近いでしょうか。
| A:寂しさを埋めたい | B:一緒に築きたい | |
|---|---|---|
| 出発点 | 自分の空白を埋めてほしい | 誰かに何かを渡したい |
| 相手の役割 | 「穴埋め係」になりがち | 一緒に育てるパートナー |
| リスク | 依存しやすい | お互いに自立した関係 |
| 長続き度 | 相手が離れると崩れやすい | 時間とともに深くなる |
どちらも自然な感情です。恥ずかしいことでも、弱さでもありません。ただ、この二つは出発点が違います。
Aは「自分の中にある空白を、誰かに埋めてもらいたい」という気持ち。帰宅した時の暗い部屋、体調を崩した時の心細さ、休日に予定がない虚しさ——その穴を埋めてくれる存在を求めている状態です。
気持ちとしてはよく分かります。でも正直に言うと、穴を埋めるために誰かと一緒になると、その人が「穴埋め係」になってしまう。相手に依存してしまうリスクがあるんです。
Bは「自分が誰かに何かを渡したい、一緒に何かを育てたい」という気持ち。こちらは、受け取る側ではなく渡す側に立とうとしている。
実は、AからBに変わるきっかけは意外とシンプルです。
自分がこれまでどれだけのものを受け取ってきたかに気づくこと。
親が毎日ご飯を作ってくれたこと。おばあちゃんが「あんたは優しい子だね」と言ってくれたこと。先生が叱ってくれたこと。友達が隣にいてくれたこと。そういう一つ一つを思い出すと、「自分もこれを誰かに渡したい」という気持ちが自然に湧いてくる。
「家族が欲しい」が「家族を築きたい」に変わる瞬間。それが、行動を始める一番いいタイミングです。
失って初めて気づくこと、大人になってやっと分かること
少しだけ、踏み込んだ話をさせてください。
家族の本当の価値は、失った時に初めてわかる、とよく言います。親が亡くなった時、実家がなくなった時、離れて暮らして何年も経った時。
でもそれは、悲しい話だけではありません。
大人になってから、ふと気づく瞬間があるんです。「ああ、自分はあの時、守られていたんだな」と。子どもの頃は当たり前だった「おかえり」の一言が、大人になってからどれだけ貴重だったかを知る。
この「気づき」こそが、人生を前に進める力になります。
自分が受け取ってきたものの大きさに気づいた人は、次に誰かに渡したいと思う。その「渡したい」が、家族を築こうとする本当のエネルギーになる。
だから「家族が欲しい」と思った今、あなたの中で何かが動き始めているんです。それは焦りでも弱さでもなく、成長の証。受け取る側から、渡す側に変わろうとしている自分に、少しだけ誇りを持ってください。
内閣府「令和4年版 少子化社会対策白書」によると、未婚の18〜34歳の男女のうち「いずれ結婚するつもり」と回答した人は男性81.4%、女性84.3%です。つまり、8割以上の未婚者が「家族を持ちたい」と考えています。一方で、結婚を望む理由として最も多かったのは「子どもや家族を持ちたいから」(男性35.8%、女性49.4%)でした。「寂しいから」ではなく「誰かと一緒に何かを築きたい」——この記事で書いたBの気持ちを、多くの人がすでに持っているということです。あなたの「家族が欲しい」は、決して珍しい感情ではありません。(出典:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」)
男女で違う「家族が欲しい」の形
「家族が欲しい」という気持ちは同じでも、そのきっかけや感じ方は男女で少し違います。
| 男性に多いパターン | 女性に多いパターン | |
|---|---|---|
| きっかけ | 日常の孤独 (暗い部屋・一人の休日・コンビニ弁当) |
周囲のライフイベント (友人の結婚・出産報告・SNS) |
| 感じ方 | じわじわと静かに迫ってくる | 対比から「私もそろそろ」と感じる |
| プレッシャー | 「このまま何十年も一人か」という漠然とした不安 | 出産のタイムリミットによる時間的焦り |
男性に多い「日常の孤独」
男性が「家族が欲しい」と感じるきっかけは、意外と地味な日常の中にあります。
暗い部屋に帰った時。休日に予定がなくて、気づいたら一日が終わっていた時。コンビニ弁当を一人で食べている時。別に不幸ではないんだけど、このまま何十年もこの生活が続くのかと思うと、じわじわと何かが迫ってくる。
この感覚は、誰かに話してもなかなか分かってもらえません。「贅沢な悩みだ」と言われることもある。でも夜の静けさの中で感じるあの寂しさは、本物の感情です。
女性に多い「ライフイベントへの共感」
女性の場合は、周囲の変化がきっかけになることが多い。友人の結婚式、SNSに流れてくる出産報告、子どもの入学式の写真。
ライフステージが変わっていく周囲と、変わらない自分。その対比が「私もそろそろ」という気持ちを呼び起こす。
特に出産にはタイムリミットがあるため、30代に入ると時間的なプレッシャーも加わります。でもこれは焦りに変えるのではなく、行動のきっかけにすればいい。
共通しているのは一つ
男女どちらにも共通しているのは、「人とのつながりの中で生きたい」という人間として自然な欲求だということ。
要は、「帰る場所が欲しい」。それだけのことです。
数字で見る、ひとりの将来
少し厳しい話もします。脅すためではなく、「だから今動こう」と思ってもらうためです。
| データ | 数字 | 補足 |
|---|---|---|
| 生涯未婚率 | 男性28.3%/女性17.8% | 2020年国勢調査。30年前の5倍以上 |
| 老後の生活費(単身) | 月約15.5万円 | 年金不足分は25年で330万〜2,610万円 |
| 孤独死 | 年間推計 約6.8万人 | 「気づいてくれる人がいるか」が安心感を左右 |
これらの数字が示しているのは「一人は不幸だ」ということではありません。「自分の人生を自分で選ぶなら、今が一番若い」ということです。
結婚だけが家族の形ではない
一つ付け加えておきます。「家族が欲しい=結婚しなきゃ」と思い込む必要はありません。
事実婚で暮らしているカップルもいます。養子縁組や里親制度を通じて、血のつながりを超えた親子関係を築いている人もいます。パートナーシップ制度を利用している人もいる。多世代シェアハウスで「ゆるやかな家族」のような暮らし方を選んでいる人もいます。
大切なのは、「あなたにとっての家族」を、あなた自身が定義すること。
世間の「こうあるべき」に縛られる必要はありません。自分が「これが自分の帰る場所だ」と思える形が、あなたにとっての家族です。
「家族が欲しい」と思ったら、今日からできる5つのこと
ここからは具体的な話です。大きなことをする必要はありません。今日できる小さな一歩から始めましょう。
ノートでもスマホのメモでもいいので、3つの問いに答えてみてください。
- なぜ家族が欲しいのか?(寂しいから? 子どもが欲しいから? 老後が不安だから? それとも、誰かに自分が受け取ったものを渡したいから?)
- どんな家庭を築きたいか?(休日はどう過ごしたい? どんな場所に住みたい?)
- 今の自分に足りないものは何か?(出会い? 覚悟? 自分への自信?)
ここを曖昧にしたまま動くと、「何がしたかったんだっけ?」とブレてしまいます。10分の自己対話が、この先何ヶ月もの行動の方向を決めます。
パートナーを迎える前に、パートナーを迎える自分を整える。全部を変える必要はありません。一つだけで十分です。
- 週1回だけ自炊する日を作る
- 毎日15分だけ散歩する
- 部屋の一箇所だけ片づける
- 寝る前のスマホを30分早くやめる
「自分の暮らしを自分で整えられている」という感覚は、そのまま自信になります。そして自信がある人は、出会いの場で余裕を持って人と接することができます。
出会いが生まれたら、見極めのフェーズです。ここで大事にしてほしい基準は一つ。
この人といる時、何かしなきゃと思わずに済むかどうか。
盛り上げなきゃ、気を遣わなきゃ、いいところを見せなきゃ。そういうプレッシャーを感じずに、ただ黙って隣にいても苦しくない人。それが長い人生を共にできる相手です。
ドキドキだけで選ぶと、ドキドキが消えた時に何も残りません。「安心」で選んだ関係は、時間が経つほど深くなります。
婚活がうまくいかない時、気持ちが折れそうな時は、誰かの力を借りてください。
信頼できる友人に正直な気持ちを話す。結婚相談所のアドバイザーに相談する。カウンセリングを受ける。どれも「負け」ではありません。「自分の人生を本気で考えている証拠」です。
特に30代後半以降で婚活を始める場合、プロの力を借りることは合理的な選択です。一人でできることには限界がある。それを認めることも、大人の強さです。
最後に
「家族が欲しい」——この記事を読んでいるあなたは、もうその気持ちに気づいています。
気づいたということは、あなたの中で何かが変わり始めているということです。
あなたはこれまでの人生で、たくさんのものを受け取ってきました。気づいていたかもしれないし、まだ気づいていないかもしれない。でもあなたの中に「誰かと一緒に生きたい」という気持ちが生まれたのなら、それは受け取ってきたものがあなたの中でちゃんと育っている証拠です。
今度はそれを、誰かに渡す番。
大きなことをする必要はありません。まずは今日、10分だけ時間を取って「自分はどんな家族が欲しいか」を書き出してみてください。
その10分が、あなたの人生を動かす最初の一歩になるかもしれません。
風船の外に出たあなたは、もう自分で風船を作れる人になっています。
あなたの「家族が欲しい」を、心から応援しています。


